【最初に】
このドキュメントは、松若かゆこが 、2017年6月28日に行われた『「AMBIENT」展 開催記念プレミアムトーク』を元に書き起こしたものです。録音は禁止されておりましたので、自分のメモと記憶を元に再構成しております。そのため、正確性については保証しかねますので、ご了承の上でご覧ください。
「AMBIENT」展 開催記念プレミアムトーク
「無印良品のデザインと深澤直人」
- 日時:2017年6月28日
- 会場:時事通信ホール
- 主催:毎日新聞社
- 特別協賛:時事通信ホール
- 協力:パナソニック汐留ミュージアム
“配布資料より”
「無印良品」の商品はなぜ、人の心をつかむのでしょう。
国内初の個展「AMBIENT」展を前にプロダクトデザイナー・深澤直人氏と「無印良品」良品計画会長・金井政明氏のふたりがその秘密について語ります。
【第1部】講演「私とデザイン」(18:30~19:00)
深澤直人氏(プロダクトデザイナー/無印良品アドバイザリーボード)
冒頭のコメント
(プロダクトデザインに関して)自分がデザインするものがどんどんなくなっている。
技術の発展によりソフト化が進んでいる。
なぜこの時期にプロダクトデザイナーが展示会を行うのかという気恥ずかしさがある。
以下、深澤氏によるスライドを見せながらのトーク。
(注)「◾️ ◯◯◯◯」と記載されている部分は、主にスライドのタイトルです。一部には、私が文脈を整理するためにつけた見出しも含まれます。
◾️ MUJIについて
名前をつけないというブランド。
そこに、「深澤直人」という名前がでることが気恥ずかしい。
◾️ 「ambient」という言葉について
「ambient」= 周囲
もの、ひと、生活の周囲
雰囲気(大まかな訳)
環境に溶けていくことが重要。
ものが突出してはいけない。
◾️ 豊かさ
「もの」のデザインではなく、そのものの存在によって、空気や雰囲気が変わる。
デザインのアウトラインを決めるにあたっては、ニュートラルであることがよい。
◾️ ものとまわりが対になる
- 物質(matter)
- 媒質(medium)
空気の中に輪郭を描いていくことで、製品を創造する。
(注:メモの正確性が、特に劣っている部分です。)
◾️ ものが壁側と身体側に別れるという概念
建築と身体に向かって、ものがどんどん移行していく。
例えば、TVなどが壁に埋め込まれていき、スマートフォンなどが身体に寄っていく。
人間の周囲が整然としてきた。必然の流れがある。
ものが壁と身体に別れて引き寄せられても、まだ、残るものがある。
それをデザインしていくという仕事はなくならない。
(注:記憶でかなり加筆しました。)
◾️ we design the ambient(正確ではないかもしれません)
家具をつかってデザインをする
マルニ木工のイスという製品で空間をつくる。
◾️ in the atmosphere
ものが置かれる場所、空間を想定してデザインをする
- 「輪郭とは境い目」
- 「ものと環境」
- 「自己と周囲」
周囲から輪郭をつくる。
「もの」のない時代に、「もの」のデザインを提示する。
◾️ 「ambient展」
ものが置かれたときの状況を体験できる展示にする。
◾️ (不明)
モノをつくる → 雰囲気を欲しい人が手に入れる。
モノに合わせて空間が変わる。
◾️ 企業からの視点(私的な補足タイトルです)
「コンシューマー」から「人」に変わる。
「カスタマー」から「ヒューマン」へ。
◾️ デザインしたエレベーターについて
エレベーターにアールをつけた。
ひかりも回り込む。
価格も普及価格帯。
◾️ (不明)
モノが消えていっても残るモノにデザインの余地がある。
MUJIも同じことを繰り返しつづけていく。
PanasonicやMUJIと共同開発のライトなどでも、今までそうしてきた。(記憶から補足しました)
◾️ 無印良品の今後の製品について
ホテルにあるような「ambient」な空間をつくるようなライトを目指したりする。
また、最小限の生活を最小の空間だけで完結させるようにデザインした小屋などの計画がある。
(小屋について補足:コンセプトビジュアルの紹介がありました。コンテナ程度の大きさ、一面がサッシで開閉する窓ガラス(カーテンあり)の小屋。ベッド、イス、机、ライト程度のみの内装。外部スペースに、竹ぼうきやチリトリなどがありました。海に面した崖の上の広野にぽつんと小屋が置かれたビジュアルが紹介されました。)
◾️ aesthetics
関係の美
コモンセンス
◾️ form
人に近づくにしたがって丸くなる。
身体に触れるものには、(尖っていると危ないので必然的に)角が取れて丸くなる。
ただシンプルなだけではなく、溶け込んでいく。
細かな配慮をしていく。
◾️ 展示会について
ミニチュアで雰囲気の検証をしている。
(スライドでは、検証のために、縮小サイズで展示室を模してつくった立体模型を収めた写真が映し出されていました)
【第2部】講演「無印良品の思想とデザイン」(19:00~19:30)
金井正明氏(良品計画代表取締役会長)
スライドを見ながらのトーク。
(注)第1部と同様に「◾️ ◯◯◯◯」と記載されている部分が、主にスライドのタイトルでです。また、一部に私が文脈を整理するためにつけた見出しも含まれる点も第1部と同様です。
「◾️ (写真を見せながらのトーク)」
- 東照宮(権威の象徴、豪華絢爛)
- 桂離宮(天皇の弟の別荘)
同年代の対照的な様式美。
桂離宮には、素を旨とする日本の美がある。
“敗戦” → 人口爆発・復興(無秩序)
- 生活のアメリカナイズ
- 公害
- 消費社会の爛熟・倦怠感。
“1980年(バブル社会の最中)”
その最中に「無印良品」が生まれた。二人の創立者。
消費社会とは
“ヒト”は人の目を気にする生き物なので、コンプレックスや憧れを作り出すことでものを売る。
- 金髪のモデル。
- アジア市場でのカラコン。
- 美白美容品のバカ売れ。
“他人と自分との比較をしてしまう。”
“化粧をせずにいられない” → 『消費者の自由を奪うのではという疑念』
ラグジュアリーとブランド
ブランドで自分を表現する、そのことへの違和感。
商業主義とデザイン
無印良品は「自分らしく自立して生きる人のためのデザイン」。
◾️ 生活者視点で装飾を排除
- 素材の選択
- 工程の点検
- 包装の簡略化
- 良い商品
- 良い環境
- 良い情報
◾️ 都市化とグローバル化
高いビルへの疑念。
50年前の車がかわいくて、人間らしい。
現在の車はそれにくらべてどうだろうか。正面から見ると、いかにもいかつい。
マーケットが欲しがっているデザインがダサい。
◾️ 自己家畜化の進行
「家畜 = 野生で生きる能力はない」 ⇆ 「野生で生きる動物」
社会に最適化され、必要のない能力は退化する。
- 危機→
- 革新→
- 発展→
- 傲慢→
- 無関心→
- 依存心→(“危機”へ戻る。)
会社でも、政治でも、この流れがある。今はどこにいるだろうか。
◾️ 多様な文明の再認識
◾️ コンチネンタル・スタイルからの脱却
(コンチネンタル・スタイル = ヨーロッパ大陸の様式やもの)
◾️ 生活が美しくなれば、社会が良くなる
ex 原研哉
- 「が」ではなく「で」
- 「が」は、エゴイズム
◾️ 役割に誠実な「これで良い」
◾️ デザイン思考の拡張
- 経営もデザイン
- 無印良品の活動=土着化
◾️ ローカルから始める未来
労働への敬意と楽しみ。→無印良品の様々な活動
米づくりに携わる(千葉・鴨川など)
- 棚田に手で植えて、縄をなう。
- 夏野菜を育てる。
- 夏野菜を育てる。
(恐らく、こうした取り組み(リンク先をご参照ください)のことを指しているのではないかと思われます)
【第3部】トークショー「これからのデザインの仕事」(19:30~20:00)
金井政明氏×深澤直人氏
聞き手:永井晶子(毎日新聞学芸部編集委員)
(注)第1部、第2部と同様にかなり抜けがあります。
「◾️ ◯◯◯◯」と記載されている部分は、聞き手の永井氏の発言の要約、もしくは、私が文脈を整理するためにつけた見出しです。
深澤氏:
自己主張がデザインだと思っていた時代があった。
しかし、『思わず・・・』という展示会があって、その中でつくったものが「壁掛け式CDプレーヤー」。
15年以上、MUJIのアイコン。古びない。
オーディオの概念を覆すものが、未だに定番でベストセラー。
金井さんとの巡り会いがあって製品化された。
(補足:恐らく、こちらのプロジェクトだと思われます。)
金井氏:
当時のMUJIは省くことだけをやってきた。
当時は日本のものづくりが残っていた。
ところが、オートメーション化(中国など)で、省くと逆にコストが高くなってしまった。
◾️ アドバイザリーボードについて
金井氏:
コンサルタントではない。
月一回、朝に会って雑談をする。
三日前に事務局がテーマをまとめて、なげる。
雑談からフィードバックする。
皆、自然とまとまってきて、方向性が決まってくる。
会長の発想でも、MUJIの理念に合わなければアドバイザリーボードが却下する。
MUJIという思想は守るだけではなく、揺さぶりも必要。
一方、MUJIのブレを止めるひとも必要。
(金井氏は、アドバイザリーボードのことを「炭鉱のカナリア」と評していました。)
◾️ アドバイザリーボードに至るまで
金井氏:
無印良品は、堤清二さんと田中一光さんがファウンダー(創立者)だった。
商業主義でやったら溶けてしまうことは分かっていた。
しかし、田中一光さん、小池一子さんの許可がないと立ちいかない状況に問題があった。
当時はアドバイザーを厚遇していた。
田中一光氏が帰宅する際には、社員が総出でお辞儀をしてハイヤーが迎えにきていた。
経営者としては、距離を置きたくなる。
そこで、気さくに話し合える関係の構築が必要になった。
補足:
小池一子氏は、現在もアドバイザリーボードを務めています。
無印良品のアドバイザリーボードは現在5名の方が務められています。
小池 一子/杉本 貴志/原 研哉/深澤 直人/須藤 玲子(敬称略)
四人体制時代のものですが、こちらがおもしろいのでご興味のある方はご覧になってください。
◾️ 今後の展開は?
金井氏:
今は、文化人類学者や哲学者との付き合いが増えている。
傲慢さが社会を悪くしている。
そこに対して、MUJIができることを考えていく。
古くなっても良いものを。古くなってよくなるものを。
“Found MUJI”の取り組み
“Found MUJI” = MUJI的なものを探す。
MUJI的なものは、公共空間にあったり、私的空間にあったりする
例えば、無印良品では、ベンチをつくって売っている。
- バス停においても邪魔にならないもの。
- 使ってよくなるもの。
- ピカピカしすぎない。
- 最初から少し汚れている。荒々しくつくる。
人が使ってデザインが完成される。
それを商品として売るのは難しいけれど、MUJIなら売れる。それが強み。
◾️ 海外から見たMUJI
金井氏:
世界からMUJIを見ると「日本」を感じる。
海外からシンパシーを感じてくれる人がいる。
価値観を共にしてくれる人がいる。
中国でアンケートをとると「平等」というキーワードがでる。
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